第一章 精神障害発生(鬱病)
3.混乱と不安と憂鬱
【無我夢中】
救急病院を退院した翌日、私は浮気(というか本気)の真偽を確かめずにはいられなく、昼休みの時間を見計らって彼の職場へ押しかけた。
ただし、事前に「一対一では話せない。親同伴なら良い。」と連絡されていたので、父親に自殺未遂の原因を説明し、彼の職場へ押しかけた。
「突然行っても会えないだろう。」との予測とは裏腹に、父が窓口で彼に私が会いに来ている旨を説明をすると、
あっけなく昼休みに会うことになった。
彼が現れると、近くの広場のベンチに促し、早速私は尋問を始める。
まずは、よりを戻せないのかと聞くと、やはり「NO」との答え。
そこで本題の浮気(というか本気)調査の問いかけをぶつけたのだが、彼はうつむいたままで、ろくに答えようとしない。
自分が不利な時は、いつもこんなだんまりを決め込む。これが彼の常套手段だ。
ほとんどこちらから一方的に質問を投げかけ、それに頷くかどうかもわからないしぐさで彼は答える。
結果、得られた情報としては、「この数日間はホテルに泊まっている。」という事と、「私に見られたしまったので過去の携帯メールの内容は消してしまった。」という事。
たったこれだけが、昼休み一杯の約50分もの時間で引き出せた答えであった。
時間が来たと見えて、彼は、勝手に席を立つ。
私は彼を追いかけ、最終手段として、「その携帯電話の名義は私のものだから返せ。」と強引に迫った。
多少の押し問答の後、彼は逆切れ状態で、携帯をつき返した。
あまりに身勝手な彼の行動に私も興奮し、携帯を奪え返すと、近くの駅のホームに入り、ベンチに腰をおろした。
少し深呼吸をして落ち着いた後、おもむろに携帯電話を開く。
なんとパスワードロックがかかている。
「あれだけ渡すのを嫌がっていたのに、これでは中が見れない。馬鹿にしているのか。」
そう思い、さらに腹が立った。
そして、足早にホームを出て、
また彼の会社へ向かった。
彼のオフィスがあるビルの4Fに上がり、受付で電話をとった瞬間、トイレから出てきた彼と遭遇。
携帯を開き、パスワードがかかっている状態を見せて「馬鹿にしているのか。」と問いただす。
ここではバツが悪いとばかりに、彼はエレベーターで1Fのロビーに私を促した。
そして、パスワードを解除させると、その場でメールの画面を開いて見た。ざっと一覧すると、過去のメールなど消えていない。
「過去のメールは消したと行ってたけど、嘘ついたね。」と問いただすと、「例の異性とのやり取りだけ消した。」と彼は回答する。
本当に消されているかどうかなど確認もしなかったが、消したというのであれば、要は見られたくないもの、つまりその異性になびいていた証拠があると考えるのが当然であろう。
私は彼に再度問いかけた。
「彼女の事が好きなの?」
それに対しての彼の返答には呆れた。
「今は好きだ。でも好きになったのは、あなたと別れてからなので、全く問題ない。私は間違っていない。」
そう平然と言ってのけた。
あまりにも馬鹿馬鹿しい言い訳をする彼を情けなく感じ、携帯は彼に手渡し、その場を立ち去った。
その後は、何が何だかわからない状態で、どうマンションまでたどり着いたかはよく覚えていない。
これが、大量服薬での自殺未遂後から入院するまでの間に、彼と会った唯一の機会となった。
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