第五章 鬱病再発生
1.再入院
【入院の必要性】
私は、常に焦燥感と共に自問していた。
「入院する事に何の意味があるのか?」
私が入院するに至ったのは、食欲減退と自傷行為があったからだと思える。
人と話をする時は、覇気は無いものの、普通の人のように反応できる。
周りの患者達と比べても、私はマトモな方だと思う。
入院する必要があるのは、自分で自分を制御出来ない人であろう。
B棟に移ってからの私は、「元気が無い」だけで、反社会的な行動など無い。
実際、B棟に移ってから何度か数日間の外泊をして、自分の制御力を試していた。
外泊中、食事・服薬は滞りなく行えていたし、最低限の家事も独りで出来ていた。
こうなってくると、入院している意味を私は見つけられない。
入院している限り、私の行動は相当制限されてしまう。
職探しをしなければならないと考えていても、それが出来るはずも無く、焦燥感にかられる。
週に一度はある主治医の診察の際、こんな考えから私は退院を申し出た。
入院してから2週間と言う短い段階から私は退院を願った。
結果、私は約1ヶ月ほどで退院となる。
主治医は、余り気の進まない様子だったが、私の状態が入院が必要で無い事は明らかであったので、退院の許可は出た。
精神病院へ入院して1ヶ月での退院は珍しい方であろう。
時より主治医が口にしていたが、「状態の変化は3ヶ月単位で見る」と言うのが精神病への対応である。
1ヶ月で退院と言うのは、肉体疾患で言えば、「3日で退院」的な感覚だそうだ。
退院の日の朝、看護士が私に質問した。
「気分はどうですか?」
私は率直に答える。
「落ち着かないとか、苛々するといったことは無いです・・・。ただ、元気は無いですね。通常の状態が10とするなら、今は3〜4くらいの元気しか無いです。」
それから、退院前の診察で主治医はこぼした。
「看護士の人から聞いたけど、3割ぐらいの元気だって?完全な回復とは言えないね。ちょっと心配だな・・・。でも、確かに入院が必要と言う事でも無いし・・・。入院してても私が安心するぐらいだから、まあ、退院でも良いんだけれど・・・」
私は本格的な精神病者にもなれず、こんなおぼつかない状況で退院した。
入院して居たいのかと言えば、はっきりとNOである。
しかし、退院してどうなるのかと言われても、これまた分からない。
ただ、職員から赤子のように対応される精神病院の中に居る私は、「こんな環境で甘えていられる訳は無い。早く仕事を探して、独立した1社会人とならなければいけない。」と焦りながら考えていた。
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