鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第一章 精神障害発生(鬱病)

1.独房生活

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【私も『気ちがい』の仲間入り】

しかし、そんなつかの間の休息も、あっという間に終わりを告げられた。
独房に入ってから数日後に主治医の診察があり、少し落ち着いた様子の私を見て、ある判断を下したのだろう。
次の日からは、10:00〜16:00まで保護室を出て、皆のいるダイニングルーム、もしくは、8人部屋に用意された自分のベットで過ごすように看護師に命じられた。
この独房を出ても病棟から外には出られるはずもなく、あの『気ちがい』達と同じ空間で過ごさなければならなくなってしまった。

看護師に連れられ独房を出た私は、始めに、病棟の端から端まで歩いて周りの様子を伺った。やはり、周りの者の異様さに気が滅入った。
16:00まではここで過ごさなければならない。

病棟内を一通り観察し終えると、私はダイニングルームが見渡せる端の椅子に座った。
『気ちがい』達の中でも、活動力のある者はこのダイニングルームに集まるらしく、ここにいると、職員の動きも含め色々と観察できるだろうと考えたからだ。
また、誰か声でもかけてきたら会話でも試みようと思っていた。

しばらくの間、私は腕を組み、鋭い眼差しでそこに座していた。
「私はあなた達とは違うんだ。」そんな雰囲気も漂っていたであろう。
『気ちがい』達の中で、私に声をかける者などいなかった。

職員である看護師やケースワーカーの人達も、目を合わせようともしない。
それはそうだろう、ここでは私は一人の『気ちがい』として扱われているのだから。
私も『気ちがい』の仲間入りだ。

ただ、掃除のおばちゃんとは、普通に会話ができた。
私が座っている辺りにモップを進めてきたので、私はそれと無しに場所を動くと、「ありがとう。」と言ってくれ、私も「いえいえ、どういたしまして。」といった内容の言葉を返した。
場所がここでなければ、本当に人間らしい、ごく普通の会話だ。

12:00に昼食らしく、その数分前から『気ちがい』達がダイニングルームに集まり、各自のコップにお茶を汲み、各々の決まった席へ着く。
皆、ここの集団生活のルールに準じることはで出来るようだった。

新入りである私の席は無く、周りの様子を見ながら看護師の横で腕を組んで立っていると、それ気づいた看護師が、空いている席を適当に見つけ、そこに座るよう促した。
そこに座って待っていると、大きなカートのような『配膳車』と呼ばれる物で、食事が運ばれて来た。お盆に乗せられた食事は、テーブル毎の順番で自ら取りに行くことになっているらしい。
(このダイニングルームには、1つのテーブルに5〜6人が座っており、そのテーブルが7〜8個はあるだろうか。)

私も周りの者達と同じように、順番が来た時、配膳車からお盆を取って、また席に戻った。
この頃には、ある程度食欲も回復してきており、出されたものを全てとは言わないものの、3割程度は片付けられるようになっていた。
ただ、食事のペースは周りより断然遅い。
遅くなることを看護師に予め断わってから、1時間程かけて食事を終えると、お盆を配膳車に戻す。特に誰からも説明はなかったのだが、この様にして、この病棟では、食事という行事が行われるらしい事は分かった。


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