鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第一章 精神障害発生(鬱病)

1.独房生活

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【とりあえず、一日一日を】

14:00頃だっただろうか、父親が面会にやってきた。
何やら入院の必需品と言われていたものを持って来たらしい。
大量の衣類、洗面用具である歯ブラシやボディーシャンプーなどだった。
私は、そんなことより、早くこの『気ちがい』達に囲まれた環境、『気ちがい』の一人として扱われる環境から脱したい為、父親へ「こんな『気ちがい』扱いを受けるようなところは辛い。」と暗に訴えた。
私も自身で入院を希望している手前、我が儘だとは感じていたが、それ以上にこの環境が嫌だった。
しかし、父親には、この者達やこの状況にそれほど違和感を感じなかったらしく、「まあ、辛抱だな。」ぐらいの返答で、私の気持ちは伝わらなかった。
尤も、私の父は年の功もあり、私の兄をシンナー中毒者として精神病院に入れたこともあるものだから、このような環境には、既に免疫があるのだということを後に知った。

その後はとにかく、16:00まで『気ちがい』として扱われ、他の『気ちがい』達を観察しながらダイニングルームで立ったり座ったりしながら時を過ごした。

16:00をちょっと過ぎた頃だった。看護師から声をかけられ、私はようやく独房への帰還を許された。
不要な物の無い空間。
これまで気を張っていた事もあり、より一層、この場が私に落ち着きを与えた。
「やっと戻ってこられた。」これが、その時の率直な気持ちだった。

前日と同じように、夕食が運ばれてきた。
前日よりは食べたであろうか?
何故か「食べなければいけない。」、そんな義務感でこのところ食事をしている。
元より食事に拘る質では無いので、美味いとも不味いともどうでも良く、また、そんな感覚すら薄れていた。

20:00ぐらいになったのであろう。
就寝前の薬が運ばれてきて、私はようやく床につき眠った。

日付が変わり目が覚めたのは、早朝、4〜5時くらいなのだろう。
日当たりの悪い場所にある唯一の東向きの窓は、うすらぼんやりと明るくなっていた。
まだ、眠れそうな感じだたので、そのまま床で横になり過ごした。

暫くすると、朝食が運ばれて来た。
時間をかけながらも、なるべく多く食べようと、ゆっくりゆっくりではあるが、黙々と箸を口に持っていく動作を続けた。
薬の副作用として食欲が出るということも聞いていたが、大量服薬の一件から入院するまでの1ヶ月間程の時よりは食欲は回復していた。
そして何より、ただ一日一日を生きようとする気持ちになっていた事が、私自身の大きな変化であった。
これも薬のおかげなのだろうか。

しかしまだ、これからどう社会復帰するかなどは、夢のまた夢。
とにかく一日を乗り切ることが、急務であり、それしか出来ない状態であった。


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