鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第二章 精神病院での入院暮らし

1.精神病院生活記

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4/21(火) 9:00頃

【いざ、出陣!(計画完了)】

私はとうとう行動に出た。事実をこの目で確認すべく。

睡眠薬が切れ目が覚めたのは、6:30頃。私は突然何故だか「今やらねば。」と思い立ち、外出の用意を始めた。寝起きでボーッとしている父を尻目に、「出かけて来る。」と言い残し、私は家を出た。

近くの大通りで、タクシーを捕まえ、入院前に突き止めていた、彼が身を寄せているだろう場所へ向かった。着いたのは、7:00ちょっと過ぎぐらいであろうか。彼の出勤時間を考えると、恐らく7:30〜8:00頃には出てくるだろう。
私は、近くの駐車場の壁により掛り、タバコを吸いながら待ち構えた。こんな時は時間が進むのが遅い物で、まだかまだかと待ていると、目的のアパートの一室から人が出て来る気配を感た。直ぐに、私は携帯電話を動画撮影モードにし、待機した。
案の定、彼は、疑いの彼女と同時にその部屋を出て来た。私は後をつけ、彼等の前に回り込み、証拠となる動画を記録した。

彼は、「何でこんな事をするの・・・」と呟き困惑気味に俯いていると、相手の女が前に歩み寄ってきたので、私は「あなたは今どんな立場か理解できてますか?」と強い口調で問うと、「はい。」と一言。私は用が済んだ事だし、事実をこの目で確かめてしまった事に少なからず動揺していたので、直ぐにその場を立ち去った。

彼はこれまで、「その女の所には行っていない。」と私に嘘をついていた事になる。朝二人で同じ部屋から出てきたのだから、これまで二人でどんな事をしていたか等、想像に安い。これで証拠は揃った。

今回は、対等な別れ話では済まさない。彼に非がある分を償ってもらう必要がある。なんせ、まだ一度も面と向って、私に対し、そして田舎から呼びつけた私の両親に対し、謝ってすらいない。
さすがに腹立たしい。

落着きを取り戻す為、近くのコンビニでタバコを買い、何本か吸った後、タクシーを捕まえ家に戻った。



4/21(火) 16:30頃

【酷い落ち込み】

何だか今日は気が滅入ってしょうがない。(もちろん、私自身の午前中の行動のせいだ。)

外泊出立の時は、「ようやく解放される。」と意気揚揚としていたのに、外泊終了時である定刻の16:30に病棟に戻ると、いやに安らぎを憶えた。
人が、それも知った面々が周りでガヤガヤ、各々好きなように動き回っている事が、何とも頼もしかった。

病棟の中で、適当な面々に「帰りました。」と挨拶を交わしていると、Oさんの話相手にされてしまった。やはり、人間関係の愚痴がメインであったか、“過去と他人は変えられない”と私自身が一番心得なければならない事を彼に告げて、話を切り上げた。
頭では分かっているのだが、心が着いて行かない。
どうしたら良いのだろうか。沈んだ気分の紛らわしにでも、また、この問題への対処法を期待し、『こころ』の続きを読もう。



4/21(火) 18:30頃

【食欲減退】

信頼していた者に裏切られた時、心は相当のダメージを負う様である。
私は、今、それを体験している。

疑わしくも確証の無かった事について、今日、紛れもない事実を目の当たりにし、食欲はまた減退した。定刻の行事である夕食は、4分の1程度しか口に運べなかった。
このまま食べずに、一度栄養失調でも体験してみようかと考えている。
まあ、今日初めてのまともな食事だから、食べられないのは無理もないかもしれない。

裏切った方は、どんな心持なのだろうか?
相手に対する裏切りより、大切な何かを守る為に行うのだろうか?
それとも、ちょっとした出来心の結果、裏切るのだろうか?
人それぞれ、その時々だろうから考えてもしょうがないが、何にせよ、今の世は、或いはいつの世も、そうなのだろう。心の強い者、心のダメージを負い難い者が生き残る。
そんな気がしてならない。



4/21(火) 19:00頃

【人の輪】

やはり人の輪の仲は良い。
改めて、いや、これまでで始めてかもしれない、こんなに深く実感したのは。

『ひろさん』につれられ、タバコ部屋に入ると、自然と会話が始まる。
入れ替わり立ち替わり周りの者が変わり、他愛も無い会話で笑えていた。

特に鬱病の私にとっては、こんな環境が良いのだろう。
(今だ、自身が“鬱病”かは納得しきれていないが。)

ここに居る面々は、本当に繊細で優しい。
『ひろさん』が冗談半分に「住む場所ないなら家に居候しなよ。」なんて言ってくれた。
そして、本当にそれに甘えてしまいそうな自分を感じた。

私は、負の連鎖を起こしたくないと考えている。
考えていると言うよりは、殉教者の様に信じて疑わないようにしている。
こんなにダメージを受けても、そして、そんな頑固さが病気の基だとしても、今はまだそれに縋り、人を信じて行きたいと思っている。


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