鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第二章 精神病院での入院暮らし

3.精神病院から脱走

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【無事(?)退院】

5月12日(火)になった。今日は、病院に行く日だ。
「午前11時くらいに来てくれ。」と言われていたので、朝8時頃目覚めると、シャワーを浴び、外出着に着替えた。
その後、時間を持て余した私は、何かしていないと落ち着かない。
落ち着かないと言うよりは、落ち着けないと言った方が正しいだろう。
とりあえず、部屋の掃除を始めた。

そうしている間に、父がやってきた。
色々事務手続きとかがあるかもしれないので、父も同伴する予定だった。
私は、父と簡単な話ぐらいはしただろうが、慌ただしく掃除を続けていた。

時間が来たので、タクシーを呼び、病院へと向かう。

いつも通り、病棟のインターホンで中に入れてくれるように申すと、ケースワーカーさんがやってきた。そして、持ち物検査や手の消毒など、いつもの手続きを経て病棟内に入った。

病棟内の扉を開けると、直ぐにダイニングルームになる。
皆は私の方を見て、「久しぶり。」と挨拶してくれる。
「もう、外泊ばっかりだよ。」等と返答しながら、私は、自室へ戻った。
すると、どうであろう。
私物を入れていたチェストや洋服箱は、そこにはなく、ベットも綺麗に整えられていた。
私は、「もう退院は確実なのだな。私物は何処かに仕舞われて、ベットは次の患者の為に準備を整えられている。」と直感した。

同室の仲間に、「帰ってきました。」と報告したのを皮切りに会話を始めると、私が外泊中の病院の様子を色々教えてくれた。

あの人は鬱病たったのだろうか。
同室の年配の患者で、「私は駄目だ。皆できる事が私には出来ない。トイレにも行けず、オムツだし、その世話を看護師達にしてもらわなければならない。」と何時も後ろ向きな事を考え、老化した自身を認められないで嘆いている者が居た。
私が入院中、そんな話を聞いては、「そう言うものだと思います。出来ない事は出来ない。それを助けるのは看護師の仕事だし、あなたが嘆く必要など全く無いのです。」と、励ましていた事が良くあった。
その彼女は、今朝退院したらしい。
彼女のベットが空いているのを見て、同室のWさんに「Uさんはどうしたの?」と聞くと、「今朝、退院したんですよ。」と教えてくれた。
「最後の挨拶ぐらいしたかったな。」と思っていると、「『金子さんにも宜しく。』と言っていたよ。」と、Wさんが付け加えてくれた。

人は色々悩みを抱えながらも、生きていかなくてはならない。
何か切ない様な、それでいて爽快な気持ちになった。


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