鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第三章 鬱病者としての日々

1.閉じこもり生活

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【初めての外来通院】

そんな生活の中、流石に時間を持て余した時は何をしようか戸惑うので、私が鬱病になった事を告げていた友人から、以前に、「そういう時は、何も考えないように、シューティングゲームをすると良い。暇なく敵が襲いかかって来る系の物が一番良い。それから、シュミレーション系は止めた方が良い。」とアドバイスを貰っていた事を思い出し、買い物ついでに中古ゲームショップで、そんなゲームを買った。ちなみに、この友人は約8年間鬱病であり、そして現在も完治しておらず私よりも強い薬を飲を飲んでいるが、3年前くらいから社会復帰を果たし、昨年には目出度く結婚もした。
それからは、時間がある時、ゲームなんかもするようになった。「本当に駄目ダメな生活だ。」と、我ながら思う。

そうこうしている内に、始めて行く外来という形の診察の日、5月22日(金)を迎えた結局、同居していた彼からは何の音沙汰も無く、私が退院当日に送ったメールが、彼と私の最後の通信となっていた。「私が退院した後に、どう別れるかについて話し合いの場を持つ。」という約束だったのだが、彼は全く無反応で、私もこれ以上何か行動する気にもならなかったので、そのままにしておいた。

診察日の前夜、彼と私との経緯を主治医に伝えようと思い、夜の薬を飲んだ後、これまでのメールのやり取りを印刷し、メール以外のやり取りは、ワープロで簡潔に綴って紙にし、これらの書類を時系列に纏める作業をした。作業が終わった時刻は、午前5時頃だった。私は、薬を飲んでも、何かをしだすと寝ずにいられる事を自覚した。

診察は午後からと言われていたので、午前10時くらいに布団から出て、シャワーを浴び、お昼過ぎくらいには病院に着くように、タクシー呼んだ。
病院に就いたのは、丁度、12時頃だった。受付に行き、始めての外来なので、「外来でX先生の診察に来たのですが。」と事務員に尋ねると。「X先生の診察は、午後1時半からですので、暫らくお待ち下さい。」と言われた。私は事前に診察日時を電話で確認していたのだが、その時、「X先生の診察は金曜日の午後からです。」と言われたので、私は午後一番に行ったつもりだったのだが、この病院で言う午後とは、13:30からであるらしい。
私は、随分時間を持て余す事になったので、病院の外に出て、入院中良く使用していた喫煙場に行き、一服しだした。すると、正面から入院中の仲間がやってきた。正面のベンチに彼女が座り、彼女も一服がてらに私と会話をした。「今日は、私、外来に来たんです。Wさん、単独で外出できるようになったんですね。」等と話しながら、時を過ごした。
人と話をする事など、退院以来殆んど無かったので、何だか心地良く、落ち着いて会話を楽しんだ。そうしていると、外出可能時間になったのだろう。外に出られる入院仲間が何人かやって来た。入れ替わり立ち替わる仲間達と、ワイワイと会話を楽しんで、私は、診察時間まで過ごした。
時間になると、「じゃあ、これから診察だから。」と皆に言って、私は席を外し、病院内に戻った。病院とは、本当に時間のかかるところだ。30分くらいだったか、1時間も待っただろうか、ようやく私の名前が呼ばれ、診察室へと入る事が出来た。

私は、主治医と簡単に挨拶を交わした後、早速、昨晩纏めた書類を「これが、彼と私のやり取りの記録です。」と言って渡した。主治医は、「沢山あるな。ちょっと目を通しす時間は無いかもしれない。」と言った。私もそれ程、何かを期待していた訳では無く、ただ彼が主治医と面会した際に、「私は何も悪く無い。」と主治医に主張していたらしいので、私もそれなりの主張をしたかっただけなのだ。私は、「まあ、時間があったら目を通しておいて下さい。具体的な彼と私のやり取りが記録されているので、私と彼の状況が少しは分かるでしょう。」と伝えた。主治医は、あまり私と彼の関係には興味が無いらしく、「まあ、時間があったら目を通しておきます。私は、あなたと彼の関係がどうこうと言う過去の出来事より、これからのあなたの精神状態を安定させる事が役目です。」というような事を言った。主治医は、本当に正直な人である。そして、私よりは随分といい加減な人である。出来ない事は「出来ない。」ときっぱり言うし、自分の範疇外の事となれば、それ程、気を煩わせるような質では無かった。そんな開けっ広げな主治医を、私はそれなりに信頼していた。
診察が具体的な内容になると、主治医が、「まだ、テストの結果が出てきてないんだよね。あれが一番見たいのに。」と呟いた。私が何のテストなのかと尋ねると、どうやらIQ(知能指数)を計るテストらしい。私は、入院中に、脳波の検査、胸のレントゲン、脳のCTスキャン、2種類の心理テスト、を受けいた。主治医に「具体的にどんな作業をするテストなのか。」と持ちかけると、「入院中に、IQテストをしていない。」と言う事が分かった。もう既にこの病院のいい加減さには慣れていたので、とくに怒る気もせず、テストの手配をしてもらう事となった。そして、診察は、特に何と言う事も無しに終わった。入院中と同じ薬の処方箋を出してもい、2週間後に次の診察を予定した。
診察を終えて、受付で待っていると、確か『臨床心理士』という肩書だったと思う、ネームプレートにそう書かれた白衣の女性がやって来て、「何時、IQテストをするか。」について話をし出した。「今からでも出来ますよ。」と言われたが、もう既に時刻は午後3時頃。テストには2〜3時間くらいかかるという話だったので、午後5時には家でいつものテレビ番組を見たかった私は、月曜日の午後1時に、そのテストを行ってもらうように話をつけた。「2〜3時間もかかるのなら、あの暇な時間が多かった入院中にちゃんとやって貰いたかったな。」と思いつつも、「どうせ、今の生活も暇だらけなのだから、逆に外出の予定が出来て良かった。」とも思った。

受付でまた暫く待たされ、ようやく診察の支払いをして、処方箋を貰い、病院を出た。
その後、私は、すぐ傍の薬局で薬を購入し、帰りにスーパーで買い物をし、彼名義のマンションへと戻った。


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