鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第三章 鬱病者としての日々

1.閉じこもり生活

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【私は鬱病に成り易い考え方】

それから、IQテストの日まで、いつものように過ごした。

5月25日(月)、IQテストの日、私の父が「今晩、郷里に帰る。」という事になっていた。帰る前に私の様子を見る為、父はマンションにやって来た。そして、そのついでに、病院まで付き添ってくれた。
病院に着くと、とりあえず一服しようと言う事になり、私と父は喫煙所へ腰を下ろした。「それにしても、入院中に受ける筈の検査が、行われていなかったなんて。」と父が諦め加減で呟いた。私は、「病院なんて、普通のサービス業と違って、何もしなくても患者がやって来るところだから。しかも、このご時世、精神科なんて繁盛して笑いが止まらないでしょう。私も病院に対しては、『薬を出してもらうところ』くらいにしか思っていない。それ以外の事は何も期待していないよ。でも、まあこの病院はそれ程悪質には見受けられないから、こんなもので仕方無いね。」と言った。実際に、私の目には、この病院で働いている人達が随分と気楽でいい加減に仕事をているように映っていた。私がこれまで仕事をしていた環境とは、随分と雰囲気が違った。そんな職場を入院中に見学していた私は、「もしかすれば、このくらいいい加減に仕事をしないと、仕事なんて続かないのかもしれない。」と頭の片隅で思っていた。
私は、この病院の職場環境と比べれば、随分と真面目に仕事に取り組んでいたものだ。始めて入った会社では、残業代も出ないのに、仕事があれば終電まで会社に居たし、必要に応じて土日も出勤していた。システムエンジニアとしての職業柄、締め切りまでには何としても担当している作業を終えなければならないので、仕事は終わるまでするものだと思っていた。そう考えていた私が、時間で区切られ、時間内に出来ない事はやらない、この病院の従業員達を見ていると、何とも“お気楽”に見えてしまうのである。もちろん、皆、それぞれ大変な思いをして仕事をしているかもしれないのだが。
こうした私の仕事観は、『鬱病』になりやすいタイプの考え方なのだろう。実際に、鬱病になる前に読んだ本などで、「私は鬱病になり易いタイプだな。」と自覚していて、仕事に関しては、なるべく手を抜くように努めようと考え始めていた。実際、同居していた彼から別れを言い渡される前に入社した会社では、あまり無理せず、そして職場の環境もそんなにタイトな感じでは無かったので安堵していた。(何と私は転落した事か。この100年に1度の不況と言われる時期に、それなりの給与待遇の会社に入り込めたのに、それを棒に振ってしまった。私は何故会社に復帰せず、入院などしてしまったのだろう。これからどうしたものか・・・。)

一通り一服し終えると、時間になり、私はIQテストを受けに病院に入った。父は、何日か前に一旦郷里に帰っており、その後、車でまた兄のところへ来ていたらしい。それなので、今日の通院も父の車で送ってもらたのだが、私がテストを受けている間、父は昼食を取るついでに何処かで時間を潰す事となり、車で一旦病院を去った。


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