鬱病生活記

 表紙
 目次
 はじめに
 第一章

 第二章

 第三章

 第四章

 第五章

 第六章

第三章 鬱病者としての日々

1.閉じこもり生活

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【記憶力低下?】

郵便局に着くと、受付へ行き、早速用意していた書類を出し、「これ内容証明で出したいんですけれど。」と言うと、担当の人が書類の内容を簡単に確認すると、「差出人と受取人の住所が記載されていませんね。これでは駄目なんじゃ無いですかね・・・。」と言った。
私は、『内容証明』を書くにあたって、当然、日本郵便のホームページで、書類の条件を確認していた。1つの紙に書く行数や字数が制限されているだけで、両者の住所が書類中に必要である等という事は、条件に無かったはずだ。まあ、一般的に『内容証明』で出す書類は、契約書だったり督促状だったりするから、必然的に両者の住所が記載されている物が殆んどなのだろう。だから、担当者が『内容証明』の意味をちゃんと理解していないだけだと思い、私は、「住所は必要無いのではないですか。私の書類は契約書とかじゃないので、住所までは記載していないのですが、ただ重要なものなので念の為、確かな証拠として残るように『内容証明』で出したいんですが。」と再度掛け合った。
すると、担当者は、「すみません。ちょっとお待ちいただけますか。確認いたしますので。」と言って、何やらマニュアルのような物を広げ、奥に居るベテランらしき職員に尋ね始めた。
担当者の確認が一通り終わると、「手書きで良いので、『付記』という形で、受取人と差出人の住所と名前を書いてもらえますか。こちらで紙を用意しますので。また『付記』の部分は字数としてカウントしないので、特に料金には影響しません。」と説明してくれた。私は、「『付記』とは何だるう。」と思いつつも、担当者が差し出してくれたマニュアルの例に倣って、用意して貰った紙に互いの住所を書き、無事に『内容証明』を出す事が出来た。
ついでに、彼の会社宛に送るので、直接本人に受け渡して貰えるように、『本人限定受取』というオプションサービスを加えて送った。

私は、「やっと、これで一仕事終えた。」と思い、意気揚揚とマンションへ戻った。ちなみに、この『内容証明』に対する彼からの返答は、6月30日までにして貰うように書いた。今日は、6月19日。週明けの月曜(6月22日)には、彼の手元に届くだろうから、土日を含め、1週間程時間があるので、こちらの要求としては常識的な範囲だと思う。
これで彼がどう反応するか、妙な期待と不安を抱えながら、私は6月いっぱいを過ごす事となった。

マンションに戻り、一通り寛いだ後、パソコンをつけ、メールの受信を行った。するとそこには、先日スタジオで一時を過ごした友人からメールが入っていた。内容は、「メールで送ってくれた書類は、彼に出さない方が良い。ちょっと、自己主張が強すぎるし、明らかに彼側が非を認める事になるこの内容には、同意するとは思えない。もっと、譲歩した提案をした方が良い。」といった内容のものだった。
私は、ハッとなった。内容証明で彼宛てに書類を送る事を、数日前にこの友人へメールで意見を求めていたのだ。もちろん、書類を添付して。
私がハッとなった理由は、友人からの返答内容に対してでは無い。実は、私は友人に相談しようかと悩んだ挙句、相談しない事に決め、メールは出していないつもりであったのだ。しかし、事実として、私は友人にメールを送っていた。メールを送信していた時間は、午前2時頃。恐らく、就寝前の薬を飲んで、少し状態が楽になった時に、衝動的にメールを送ってしまったのだろう。自分の行動を勘違いする事など、こんな病気になる前は滅多に無かったのだが、こんな事があると、どうも自分自身の事を不審に思えてくる。

友人には、正直に「書類は出してしまいました。実は、あなたにメールしようかと悩んだけれど、結局メールはせずにいたと思いこんでいました。だから、今日、病院に診察に行ったついでに、先程書類を出してしまいました。」と返答した。

まあ、『内容証明』を出す意義は、彼に非を認めてもらう為でなく、今後の交渉の布石としての物だから、彼から同意する署名を貰う事など期待していなかったので、私はそれで良かったと考えている。その事も、友人には告げた。

明日から土日だ、競馬がある。気楽に過ごせるし、その後の一週間は、これまで同様、彼からの返答があるまで気楽に過ごそうと決め、私は開き直っていた。


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